中央線人身事故車両同乗記


人身事故が飛びぬけて多いことで有名なJR中央線。
仕事を終えて駅に向かうと、ホームには中央線下り、高尾行き快速が着いたところだ。
次の電車は、立川行き。
高尾より手前までしか行かない立川行きのほうが、空いているはず、と一瞬迷ったが、少しでも早く帰りたかったので、今ホームにいる高尾行きに乗車したのだ。
だが。
よりによって、乗り合わせてしまった。人身事故の電車に。
しかも俺自身、二度目。
運が悪いというか、奇特というか。。。


9/2 22:02
三鷹をすぎて、武蔵境に向かう途中、何もないところなのに電車がモーターを完全に止め、フワーン、ガコン!という音とともにゆるやかに、静かに停車。嫌な止まり方したー!
シーン。
「・・・お客様にお知らせいたします。ただいま、この電車は、踏み切り付近で人身事故を起こしました。お知らせいたします。ただいま、この電車は、人身事故を起こしました。ただいまより、復旧作業を行います。運転再開まで、相当時間を要する見込です。大変ご迷惑をおかけいたしますが、少々お待ちいただけますよう、お願いいたします」
やっぱし、人身。
初めてじゃないから、何となくわかる。
止まり方が違う。気持ち悪い。
しかし、その電車に乗りあわせるというのは最悪。時間のつぶしようがないし、立ちっばなしで30分は待たされる。。。

22:17
他の乗客はざわついてるが僕は2度目だからなんとなく様子はわかる。中央線ヘビーユーザーとなると、人身事故の一つや二つ、経験したくなくても経験するものだ。
踏切だから、自殺とは断定できないが、とにかくその電車に乗ってた、ってのが運が悪い。
窓の外にサイレンが見える。やっと救急、警察が到着したらしい。なんでもいいから早くしてほしい。この場合、もしかすると人身は最悪の状況かもしれない。
このあと、現場検証で一回真っ暗になるはず。経験者は語る。
とりあえずやることがないので、本でも読むが、身が入らない。

22:25
車内放送。
「ただいまより、レスキュー隊による救助作業を行います。なお、作業の安全のため、いったんこの電車、すべての電源を切らせていただきます」
車内は、またざわざわ。
レスキュー隊。ということは、もしかして、人身は息があるのか。
しかし中に閉じ込められていると、人身の生死よりも、電車が動くことのほうが大事に思えてくる。
もしダメなら、成仏して・・・。
などと、だんだん荒んだ気分になってくる。

22:32
電源が切れて、車内は真っ暗に。冷房も切れて、暑い。
モーターが完全に切れて静まり返った車内は、人いきれでとても蒸し暑く、普通の人でも、気持ち悪くなりそうだ。
飛び込みだか事故だか知らないけど、もうレスキューとかいいよ、とにかく先に電車を動かしてほしい。

22:37
具合わるそうな女性が、真っ青な顔で運転士室に向かう。
気分でも悪くなったのか、それとも、トイレか。
こんなときに漏らしたら、大変だ。逃げ場なし。

22:43
車内放送。
「ただいま救出作業を行っていますが、救出作業、難航しています。いましばらくご辛抱いただけますよう、お願いします」
難航・・・。
事故の救出も大事なんだろうけど、乗客の立場は??
おおかた、ダメなんだろう。人命はもちろん大事なんだろうけど、とてもそんな気持ちになれない。
最悪な想像だが、多少の○○は踏んででも、進んでほしい。
以前に人身事故の車両に乗りあわせた時は即死だったらしく(車内放送で車掌が「死体を車両の下から搬出・・・」と口走った)そんなに時間がかからなかったが、今回は生死がはっきりしないのか、時間がかかっている。

22:50
まもなく救出作業終了らしい。このあと安全確認、とかあるはずだ(経験者)
JRの確認作業は、営利性が低いせいか、私鉄の倍以上時間がかかるらしい。たとえば京王線なら20分もしないうちに動くと聞いたことがある。糞JRめ。定期代返せ。

22:56
やはりこれから安全確認、という車内放送。
もういい、早くしてほしい。
車内の鬱積した雰囲気もかなり限界に近い。
車掌の声が急に暗くなったところを見ると、やはり最悪の事態だったのだろう。
仕方ないと思う。
塩をまいて、先に進んでほしい。

23:06
やっと動いた。事故を起こしてから1時間以上・・・。
武蔵境駅で車掌が車内にきて気分の悪い客を伺う、などと言っている。
気分、というか、機嫌悪い客に殴られるだけではないだろうか。
というか、その仕事は駅員がやればいいのではないか。惨状の片付けまでやった車掌に罪はない。



翌日の産経新聞より。
飛び込みでJR中央線止まる
2日午後9時55分ごろ、東京都武蔵野市のJR中央線三鷹−武蔵境間の踏切で、東京発高尾行き快速列車に男性が飛び込み、間もなく死亡した。東京−高尾間で上下線が1時間以上運転を見合わせ、同11時10分ごろ運転を再開した。
運転士の証言から、警視庁武蔵野署は男性が自殺を図ったとみて身元を確認している。

やはり、飛び込み自殺。
いろいろな事情はあるのだろうけど、素直に冥福を祈る気にはとてもなれない。

じょうぶつ【成仏】死んで,この世に執着を残さず仏となること。
めいふく【冥福】死後の幸福。「御―を祈る」

電車への飛び込みというような死に方を選ぶのはやめてほしい。


(参考)
朝日新聞(1999年6月28日(月))より
JR中央線をはじめ、列車への飛び込み自殺が最近目立つが、鉄道会社や関係者によると、 遺族が鉄道会社に支払う損害賠償額は、 多いケースで約800万円にのぼる。鉄道会社が請求するのは乗客への払い戻しにかかった費用など必要最低限の額だが、なかには一度には払えずに分割払いを続けている遺族もいるという。
家族の突然の死という精神的な痛手に加えて、経済的負担も背負わせることになるため、鉄道会社自身も頭を悩ませている。
人身事故が自殺と断定された場合、鉄道会社が遺族に請求するのは車両の修理費のほか、列車が止まったことに伴う乗客への払戻金やタクシー代など。通常運転していれば見込めた収入については、請求額に算入していない。
賠償請求額は乗客数や時間帯など状況に応じてさまざまだ。 停車時間が短かったり、払い戻しの必要がなかったりしたときは2、3万円で済む場合もある。しかし、ラッシュ時で影響人員が数万人にのぼるときは、600万−800万円を請求することもあるという。
自殺とみられる鉄道事故は、不況下で増加傾向にあるという。特にJR中央線では今年4月以降、約10日に1件のペースで続いた。首都圏で発生する列車の遅れの原因のうち、3割以上が自殺ともいわれる。
鉄道各社では、駅員の巡回数を増やしたり、ホームの照明を明るくしたりなどの対策をとっているが、目立った効果はない。ある鉄道関係者は「自殺によって家族の一員を失った遺族に、損害賠償を請求しなければいけない会社側もつらい。家族のことを考えて、自殺を思いとどまってくれることを願うしかない」と話している。



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